日々の雑感、他愛ないこと。印のように記してみたり。日々の呼吸を此処に。 忍者ブログ

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静物


 玖月になり朝夕の空気の冷たさに余計な熱を吸収しなくなったせいだろうか、あたしばかりでなく亀たちや果実、乾燥花から布巾まで夏の頃より無口になった。冬が来るまでに静物は硬質さを増し凛とした佇まいと他を射抜くような眼を身に付け、静物でないものは静物に近付いていく。
 咽や唇の乾きが違ってきたからだろうか。あたしの滑舌の悪さに変わりはないけれど、ひとつひとつの言葉が幾らかはっきりとし耳に響く。紙の類はどうだろうと文庫本を何度も撫でてはみるけれど、違いはわからない。紙の質感は何処で変わるのだろう。
 温度は不思議だ。夏の暑いときはものの表面の熱さに其れが熱を放出しているとさえ感じてしまうのに、冬はものの冷たさに熱が逃げないよう身を守っているとさえ感じてしまう。
 卓に腕を乗せると一瞬腕にひんやりとしたものを覚えるようになった。もう少ししたらあたしの頬ずりが始まるだろう。卓に、果実に、文庫本に・・・。それから冬と云う季節に。

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