日々の雑感、他愛ないこと。印のように記してみたり。日々の呼吸を此処に。

(6月からお休みしていましたが、再開しました。)
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雨音


 部屋が雨音で満ちていく。そのうち部屋から溢れ出すのだろうかと想い、さっきからあたしは開けた窓を少しづつ閉めることを繰り返していた。玄関の脇の硝子戸は吹き込むらしい。カーテンが雨の模様になっていた。其れでもきっちり窓を閉めたくなんてない。
 なんで雨音はこんなにも種類があるのだろう。ああ、此れは全部元は同じ雨の音なのかと想うと全く不思議で仕方ない。そしてあたしの耳はこと雨音に関しなんてみょうちくりんなのだろう。確かに耳は雨音を捉えている筈なのに、口真似しようとしてもひとつもできない。まだ鳥の鳴き声の方が真似できていると想う。
 意地悪や冷たさに泣きたいなどと想わない。やさしいから泣きたくなる。今日の雨は颱風かと想うような雨だけれど、やっぱりやさしいと感じる。やさしいと感じるものは、あたしの内側を撫でる。ずっと降り続いてくれたならなどと想ってしまう。人間の体の半分以上が水ならば、あたしは下半身は魚でもよかったのに。
 抱えてしまった小さな棘たちを雨音が濡らしている。すっかり濡れたらひとりでにまた抜けていくのだろう。齢と共にあたしの乾いた眼はますます乾いていく。そのうち干乾びるのだろうかと想う頃、こうして雨がやって来る。
 今日の雨があがるのは夕刻になるだろう。部屋から部屋へ移ることをして壱日過ごそう。そうしなければ苛立ちが直る筈もない。雨音を掬い集め水に帰る頃、やっと人ぐらいの顔を手に入れているだけにすぎなくとも。

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