日々の雑感、他愛ないこと。印のように記してみたり。日々の呼吸を此処に。

(6月からお休みしていましたが、再開しました。)
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誕生日に


 チケットはコンビニエンスストアで発券して貰うような味気無いチケットとは全く異なるものだった。其処に戸籍上自分が産まれた日付が印刷されてあった。
 ライブが終わると暫く待たされ、そのうち順番を呼ばれ階段に並ばされた。何か語り掛けてもいいのだろうかと考えていたけれど、何も浮かんでこなかった。
 順番が来て其の人の前に立ったとき、落ち着いているようでいて頭は飛んでしまっていたのだと想う。あたしはいつもそうだ。傍から見ると冷静で無表情であっても興奮していたりする。其の人の手は、他の人の手と同じように熱かった。きっとあたしの手を冷たいと感じたに違いない。其の人とした握手は、握手と言うより、互いにふれると云うような握手だった。言葉数の少ない人其の侭の人が眼の前にいて嬉しかった。同じ処に立っているのも嬉しかった。緊張していたり気を遣っているときに限り、此の頃あたしはよく話すようになっていて、一瞬戸惑ったあとですらすらと話し掛けている自分が其処にいた。ぎゅっと手を握ることもなく素っ気無く終われてよかった。
 後ろにいた人は女性だったけれど、其の場を後にするとき握手する姿が眼に入った。両手で彼の手を握りなにやら話し掛けている様子だった。きっとこんな日があることを誰も想像していなかっただろう。
 バンドが解散した日、其の壱度だけ客席から大声で其の人の名をあたしは呼んだ。ひとりでうたい始める彼の姿を全く想像できなかった。

 帰りは小雨が降っていた。電車の中で泣きそうになった。何年もの想いが頭の中をぐるぐる廻るのを感じると、素っ気無く終われてよかったとまた想った。

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