日々の雑感、他愛ないこと。印のように記してみたり。日々の呼吸を此処に。

(6月からお休みしていましたが、再開しました。)
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螺旋階段


 家を出、道の向こうの空き地の奥にのうぜんかずらが咲いている。気付いたのはいつだったろう。其の朱い色を胸に閉じ込めてしまおうと日傘を深くさし、陽の照る道を急いで歩くようになった。立ち止まってみつめたりしても或の花には決して追いつけない。ひと花開くと次々に或の花は開き辺りを朱く染めてしまう。
 細い道を抜け木立に埋もれた階段をのぼり大通りに出るときは気をつけなけりゃいけない。自転車は大抵猛スピードを出している。そして信号ときたらは何故か必ず赤でなかなか向こう側へ渡れないのが常だ。
 信号を渡った先には梔子が咲いている。梔子の花は強く匂いを放っている日もあればそうでない日もある。けれど梔子の花独特の白は必ずあたしの足を立ち止まらせる。梔子の奥には此の辺りに住んでいる者でも滅多に利用しない螺旋階段があり、コンビニエンスストアや郵便局や駅へも続いているのだけれど、いつもひっそりとしている。あたしは其の螺旋階段が結構好きだ。滅多に人に逢わないのをいいことに、梅雨時ともなると何処まで梔子の花の匂いが付いてくるか、そんな遊びをして上っていくのが愉しい。
 螺旋階段を壱段上る毎、のうぜんかずらの色も梔子の匂いも落ちていく。落ちていくと悲しいような気持ちにもなるけれど、振り返り落ちた足元に眼を向けると頬がゆるむ。胸にずっと持っているより、其の方が瞼に張り付き永遠でもあるかのようあたしから離れていかなかったりするから不思議だ。
 此の町に来て少し悲しいことも知った。残酷だったり意地悪だったりするのはいつも人間で、花の中に顔を埋め乍らあたしは朝から重い息を吐く・・・。

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