日々の雑感、他愛ないこと。印のように記してみたり。日々の呼吸を此処に。

(6月からお休みしていましたが、再開しました。)
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蚊取り線香


 燐寸を擦り蚊取り線香にうまく火を点けたつもりが、先の部分がほんの少し朱くなっただけで終わった。弱々しいけれど一応上がった煙に消える様子はなく和室に置いてみると、瞬く間に部屋は線香の匂いに満ちた。急いで亀たちを外に出したものの、家の戸は全て開け放ったままだった。亀たちもだけれど自分の咽も気が気でなかったので。
 和室から抜けた煙は廊下を走り洋室から洗面室から台所まで行き渡り、家中煙ってもあたしはまだ信用できず、蚊取り線香を台所へ移した。
 朝の陸時に炊いた蚊取り線香は昼の拾弐時まで持った。さすがに蚊はいなくなったのではと想え、ひとつだけで止しておいた。
 蚊取り線香を使うのは弐年振りだった。去年は蚊をみつけ叩くことができたらしい。古い家は窓が傾いているのか、網戸に隙間ができてしまう。浴室の網戸ときたら壱センチ近く隙間がある。幼少の頃のように蚊帳でも吊って蛍でも放してみたい気持ちに駆られるが、或の夏は幻でもあったかのように色こそ鮮明なくせ思い出す傍から胸に空洞をこさえる。
 或の頃は引っ越す前晩秋の落ち葉と一緒に残らずくべてしまった筈が、いつまでも落ちない実のようにあたしの内でじゅくじゅくとしている。

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