日々の雑感、他愛ないこと。印のように記してみたり。日々の呼吸を此処に。 忍者ブログ

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虫たちの夏


 路地を歩いていると、木蔭から飛び出してきた黒いアゲハが、眼の前をゆっくりと横切っていった。越す前に住んでいたアパートの裏ではよくアゲハを見掛けたけれど、此処では見られないと想っていたので、余計頬が緩んだ。
 家に着き階段を上がると、今度は扉の前に腹を上にした蝉が弐疋いた。尽きてしまったのかまだ命があるのか見ただけではわからず、日傘をたたみ先を使い起こしてやろうとすると羽根を激しく動かし飛び立っていった。もう壱疋は其の勢いでひっくり返り腹が下になったものの、じっとしていた。壱度家に入り買ってきたものを冷蔵庫に入れ水を飲んでから見に行くと、蝉はいなくなっていた。
 晴れた日は虫たちが表に出てくる。道を歩いていると、アスファルトの上に飛んでいく影が映ることがある。(大抵はアゲハの影だけれど。)向かうのは近くの百日紅か、木槿か、それとも遠くに咲く朝顔か、のうぜんかずらなのか、想像すると眼は自然に空へ流れる。
 今日はよく晴れた。遠くの空が黒い。風も出てきた。夕立が来るかもしれない。生死の匂いが壱段と強くなっている。

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