日々の雑感、他愛ないこと。印のように記してみたり。日々の呼吸を此処に。 忍者ブログ

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薔薇の咲く公園にて


 布団を干し散歩に出掛けるとすぐに咽が乾き飲料水を求めることになった。コートは必要なかったようで、まるめてリュックに納め歩いた。
 隣町の大きな公園は薔薇が盛りを迎えていた。春の頃と異なるのはアーチを飾るオレンヂ色の薔薇がなかったことで、オレンヂ色の薔薇が好きなあたしは其れが少し淋しかったけれど、薔薇の中を歩き廻るのは愉しく、首がひりひり痛むのも構わず太陽の下にいられた。
 風があればあまい匂いが薔薇の間を廻る。今日は全く風の無い日で、花に近付かなければあまい匂いをかぐことができなかった。ただ、空の色が青く、花の傍にしゃがむと薔薇ごと空に抱かれているような気分になれた。逆光に見る薔薇は花の色が光に透け葉の周りが光り、天国だとか楽園だとかそう云うものを想わずにいられない。そんなときに耳の内に聴こえてくる音楽の名を子供の頃は知らなかったし他に聴いたこともなく説明できなかったけれど、ブルーズやマイルス・デイヴィスの死刑台のエレベーターやミツバチのささやきの映画を知ったときから他人に幾らか話せるようになった。
 何時の間にか何かに鷲掴みにされたような胸を薔薇の匂いが撫でていた。気になる胸を軽くしようとじりじりとした陽射しに痛む首の後ろに手を廻したとき、今日は鳩が壱羽も見えないことに気付いた。其の代わり、何の集まりなのか、ぞろぞろと列を成し公園を歩く老人たちが眼に入った。彼らを眼で追うとそこいらじゅうどんぐりがいっぱいだったのを初めて知り、ベンチにひとつ挟まっていたのをみつけ抓んで落としてやった。
 公園は今日も静かで、賑やかだった。

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