日々の雑感、他愛ないこと。印のように記してみたり。日々の呼吸を此処に。 忍者ブログ

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 ひんやりとした空気に満ちた朝の部屋で毛糸も縮こまる。陽射しの入った朝はふっくらとし乾いているのに幾らか湿り気も感じる。
 今回の毛糸は伊太利製のカシミヤ入りだけれど、絲がすぐに割れて編み辛い。然も編み図通りだと丈の長さが合わずラクラン袖の減目の計算に手こずり、昨夜やっと後ろ身頃を編み終えた。
 店の何周年とかで安く手に入れられた毛糸は、もともと高額なものでもないだろう。それでも手に乗せたときのぬくさと重みに羊が想い浮かぶ。其れも壱度も手入れなんてされていない羊が浮かぶ。陽射しを吸い草はらで遊び土を躯につけた匂いは、じゃがいもの匂いにも似ている。毛糸をいじっていると草の実でもつけてみたくなるのは、そう云うわけなのかもしれない。
 きみも珈琲を飲むかい?牛乳が入っているからに苦くはないよ。・・・と声を掛けると、羊はそっと近付いてくる。彼の心臓は未だとても小さくふるえているけれど、彼の顔は好奇心いっぱいの眼を持っている。
 硝子戸の向こうから弐階や隣でつけたらしいエアコンの室外機の音が聞えてくるまでの朝の数分間、羊は確かに此の家に現れる。其れがあたし(だけ)の想像に過ぎなくても。

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