日々の雑感、他愛ないこと。印のように記してみたり。日々の呼吸を此処に。

(6月からお休みしていましたが、再開しました。)
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玉葱を抜いたのは


 かあさんの家に着いたのは拾弐時半だった。壱時間後かあさんの介護認定の調査に立ち合い、終わった頃に叔父がやってきた。齢に達したので仕事を辞めたと聞いている。午前中隣り町の皮膚科にかあさんを連れていってくれたと想ったら、今度は伯父の家に野菜を貰いに行こうと言う。
 知らぬ間に麦秋の季節になっていたらしい。車窓から覗く景色に時折金色に輝く壱画が眼に入った。かあさんが骨折し壱箇月の間毎日病院を自転車で往復した道の脇にも麦畑が拡がっていた。あれも梅雨入りの頃だった。そうして感慨に耽っていると気付けば伯父の家に着いていた。

 茄子や胡瓜やトマトをもぎったことはあっても、玉葱を抜いたのは想えば生まれて初めてだった。だから半分埋まっているのを見て、どうするのだっけと考えてしまった。葉を掴み引き抜けばいいのだけれど、やってみても力加減がわからず最初はなかなか抜けなかった。其れを見た叔父が笑うのでうんと力を込め引っ張ると今度は抜けた。後でかあさんに其の話をすると、そんなに力は要らないとかあさんにも笑われた。
 籠がいっぱいになり水道で手の汚れを落としていると、薄っすらと土の匂いが鼻にあがってきた。いい匂いだと想いながら畑の方を振り返ると玉蜀黍や、ビニイルハウスから覗く葡萄が見えた。伯父の人柄其の侭如何にも瑞々しくおいしそうな実を付け始めていた。あれが実る頃また手を汚しに来たいと想った。

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