日々の雑感、他愛ないこと。印のように記してみたり。日々の呼吸を此処に。

(6月からお休みしていましたが、再開しました。)
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携帯電話を忘れ


 携帯電話を置いてきてしまったことに気付いたのはバス停に着き時間を確かめようとした時だった。手提げ鞄に入ってないので、深呼吸をし鞄の中を弐度確かめたけれどやはり無かった。バスをひとつ遅らせることに決め来た道を戻り、「忘れたあ。」とかあさんの家に入っていくとかあさんがいなかった。
 玄関に鍵は掛かってなかった。其の辺にいるのだろうかと想い、先ず卓に置いた筈の携帯電話を探したけれど携帯電話は無かった。勘違いしているのかと想い、鞄を置いていた奥の部屋も見たけれど其処にも無かった。
 やはり置いたのは卓だったと想い部屋を戻ると、卓の上に家の鍵と一緒にかあさんのサーモンピンクの色をした携帯電話電話が眼に入った。断ることなく手にし自分の番号に掛けたけれど、電話の鳴る音は聞こえなかった。もしかしてかあさんが届けてくれようとバス停まで行ったのだろうかと家を出ようとすると、普段かあさんが使っている手押し車が眼に入った。此れが無いとかあさんは外を歩けない。杖の壱本は伯父の家に(おとつい下駄箱を開けたら無くなっていたが。)、もう壱本はデイサービス所に置いてあると聞いている。迷った挙句かあさんが帰るのを待つことにし、もう壱度かあさんの携帯電話から自分の番号に掛けたけれど応答は無かった。
 かあさんが帰ったのは間も無くしてだった。ふたり違う道を行ったのですれ違いが起きなかったのだった。「歩けたの?」と訊いた途端心臓がばくばくした。かあさんはと言えば、「あら、そうね。いざとなると、って言うけれど本当にそうねぇ。」と言い他人事のように笑っていた。其のときあたしの頭にはアルプスの少女ハイジの物語が浮かんだけれど、此のまま元のように歩けるようになるとも想えない。けれど、火事だの地震だの洪水だのと、かあさんを気に病むのはほんの少し軽くなったかもしれない。

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