日々の雑感、他愛ないこと。印のように記してみたり。日々の呼吸を此処に。 忍者ブログ

頁を戻る頁を捲る

夏の朝


 夏になり、鳥の鳴き声は消え、蝉の鳴き声に変わった。夜の空気が残っている部屋の中はそう暑くはないけれど、外はもう蒸し暑さに包まれている。水道の水はぬるく、手を浸してもさっぱりしない。弐杯目の紅茶は氷を入れて飲んだ。それで幾らか眠い眼が少し覚めた。
 洗濯をし亀たちの世話をし塵を出したあとは、掃除機をかけるのでなく、パソコンをいじったり手紙を書いたりし此の頃朝を過ごすようになった。八時になるにはまだ時間がたっぷりあるので、散歩でもしたらいいだろうかと想うときもあるけれど、陽射しを見てやめてしまう。代わりに真島昌利の「夏の朝にキャッチボール」を口遊び外へ出た気になり、ときどき部屋の中で腕を伸ばしたり飛び跳ねたりして、夏と呼吸を合わせている。
 今年は朝顔を育てなかった。支柱を立てても支柱の先まで蔦を伸ばす。絡ませてもいい場所がみつからないうち夏になってしまった。風が来ると裾がふわりと浮くカーテンを見ていると、其の向こうに朝顔がなくても平気だと想えるのは何故だろう・・・。瞼の裏に朝顔の花の藍色が残っている。未明の空に似た透明で静かな空気を抱く色だ。其れをじっとみていると、そのうち夏の朝がカーテンの向こうよりも瞼に拡がっていてぼくを手招きしている。
 子供の頃解けなかった問題は未だに解けず小さな塊になりぼくに滞在まっているけれど、或の頃閉じていた胸は今では朝顔の花のように開き、蝉の抜け殻に入り込もうとはしない。それでも未だに八月は秘密を抱えようとし、紅茶を飲み終えると炭酸水を欲しがっていた。今夜部屋を抜け出して、また或の海へ行くかもしれない。
 ぼんやりしていると、何処からか子供たちの声が聞えてきた。朝が終わる。

拍手

      郵便箱

   
      * メールは表示されません