日々の雑感、他愛ないこと。印のように記してみたり。日々の呼吸を此処に。

(6月からお休みしていましたが、再開しました。)
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七輪を置いた庭で


 昨夜から伯父の家にいる。軍鶏の鳴き声が聞こえないと想ったら、鶏小屋が空になっていた。淋しい朝はあたしの頭を重くさせ、なかなか起きられなかった。
 昨夜の残りの蕎麦を昼近い時間に食べていると、いとこもおまえも御馳走になれと促された。外へ出ると今年ももうひとりのいとこが庭先で火を熾し七輪に炭を入れ、なにやら焼いていた。いい匂いが玄関まで届く。風も無く青空の拡がる元日になった。いとこが焼いていたのは帆立だった。今年は帆立と海老にしたらしい。居間にいる伯父と母にも何度か運んだけれど、ねえちゃんも食べてと頻りに勧められ随分腹くちくなった頃、一旦部屋に戻ったいとこが出てきた。
 いとこたちで癌治療をしているいとこのことや自殺した友人のことや七輪で帆立を焼くまだ小さかった頃のいとこの彼のことや・・・、とりとめもなく話をした。小さな頃から伯父の家に幾度となくあたしも来ている。随分時が流れ、泣き出したいような気持ちも覚えたけれど、兄のようなひとつ違いのいとこと話をしていると静かな気持ちになる。どうしようもないことは本当にどうしようもない。其れがわかるから静かな気持ちにもなれる。いとこは其れをはっきり口にする人で、癌治療をしているいとこに向ける気持ちもとても静かなもの違いない。
 猫除けなのだろうか。土に挿した枯れ木に被せた空き缶がからからと音を鳴らし始めていた。風が出てきたらしい。丁度帆立も海老もなくなり火の始末をしていると、弟のようないとこが伊勢海老をまるごとがぶりとしたいと言うので、壱尾ならねえちゃんも買ってあげられるから来年は食べたらと言うと、皆に御馳走できるほど金が無いもんと頭を掻いた。其の仕草が可愛らしかったので、こっそりひとりで食べたらいいとは口にしないことにした。
 軍鶏の見えない庭に来年も、或いは夏に、あたしはまた帰ってくるだろう。

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