日々の雑感、他愛ないこと。印のように記してみたり。日々の呼吸を此処に。 忍者ブログ

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チョコレートと黒そい


 コートにブーツを身に付け、ポケットにチョコレートを忍ばせて歩くと辺りは冬になった。咽が乾くのと寒さを感じるのと、冬は一緒にやって来る。
 まだ早いと感じたのに、町中に出るとコートを着た人もブーツを履いた人も結構いるのに驚いた。そんな中、白いシャツ壱枚で颯爽と歩く青年を見掛け、まだ晩秋だと想い赤く色付いた壱番大きな落ち葉をひとつ拾い家に持ち帰った。
 去年拾った楓の葉は綺麗な押し葉になって残っている。袋から取り出して手に乗せると、チョコレートの匂いがするような気がした。

 夕刻台所に立ち、買ってきたまるまるとした黒そいを煮つけにしようか焼いて食べようか迷いながら捌いていると、奇声を発する羽目になった。随分まるまるしているから腹に卵でも入っているのかと想いきや、なんと中から弐尾も魚が出てきた。壱尾は半分消化された状態で、もう壱尾は其の侭魚の姿をしていた。
 チョコレートを頬張る自分の腹も似たようなものだろうに・・・。奇声を発し悪かったと想い、ごめんと黒そいの腹を撫でてはやったが、数分後には其の黒そいもあたしの腹に納まることになった。

 腹の中に晩秋が溜まっていく。じきチョコレートの匂いと混じり、あたしの内側からあたしをつつくことだろう。冬を教えるように。

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