日々の雑感、他愛ないこと。印のように記してみたり。日々の呼吸を此処に。 忍者ブログ

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 国産の檸檬が手に入った。もう時期も終わり割ると中が黒くなっているのしか出回らなくなったと想っていたから、随分見た目がきれいだった檸檬にも期待はしていなかった。
 袋を開け取り出した檸檬は予想を裏切りやわらかく瑞々しく、皮をブラシで洗ってやると内側から光を放っているようにも見えた。そうして包丁の先を濡らしたあと保存容器に汁を溜めた。
 檸檬でも柚子でも煮たものは苦手だ。砂糖漬けしか作らない。
 炭酸水で割りレモネードにした檸檬は甘酸っぱくて何だか泣きたくなる。月を食べたらこんな味だろうかといつも想う。そのあとで梶井基次郎の話を思い出しては未だに割れてみたいなどと想っている自分を再確認し、みんな大抵ぎりぎりのところで生きているものだよ、と声にならない声を発して今日も笑っていた。
 檸檬の中に隠されたものが見える人、気付く人、気付かない人、見ない人、そして見えない人で溢れた通りは、人の姿を隠したり露わにしたりと忙しそうだ。

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