日々の雑感、他愛ないこと。印のように記してみたり。日々の呼吸を此処に。 忍者ブログ

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 目黒区の美術館へ出掛け、高島野十郎の絵を観てきた。
 暗い色調にも芥子の茎や樹木の枝などのうねるような独特な線にも何枚も描かれた蝋燭の絵にも惹きつけられたが、とりわけ光と闇と名付けられたコーナーに展示されていた絵を夢中になって観ていた。月と題された絵は、月ではなく闇を描いているのだそうだが、観ているうち井出情児氏の寫眞を思い出してしまった。
 野十郎は画面の隅々まで怠ることなく細部まで描く。なのに写実的だとかまるで寫眞のようだなどとすぐに頭に浮かばない。自分の胸と対峙しているときのやわらかでぬくい輪郭の曖昧な、けれどはっきりとした強い象が瞼の裏に浮かんでくる。例えば言葉になぞらえるなら其れは光、記憶の中にあるまぶしい景色だったりする。
 人間の表現する精神性にいつも静謐を感じる。蝋燭の絵ばかり展示されたコーナーを廻っていると、耳の内に雪の降る日、或いは夜明けの空の、音が聞こえてきて眩暈さえした。
 気付いたらあっと言う間に時間が経っていて、また一周なんてことはとてもできなかった。

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