日々の雑感、他愛ないこと。印のように記してみたり。日々の呼吸を此処に。 忍者ブログ

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 雨音で目覚めた朝。湿度に誘われるかのように珈琲や乾燥花が匂いを部屋に拡げていった。禄月の雨の日なら梔子の花を紙に飾ったビリー・ホリデイの歌を。
 今日は表に人の話し声がない。車の音も聞こえてこない。通りは静かになり、上の方がかすんでしまったビルや埃を落とした街路樹を飾る無数の雨粒を見ているうち、雨の中を歩きたくなった。
 服の裾が濡れていくほど降っていたけれど、雨の日は決して嫌いじゃない。何時の間にかなつかしい感覚におそわれていた。いつか観た映画の町に通りが重なり、小さな自分だけの世界が傘の下にできていた。泣くことはもうしないけれど、泣きたくなるような気持ちがなくなることはないだろう。いつもいつも思い出すものはみな雨の日とつながっているわけじゃないのに、雨が似合う。

 今日何杯目かの珈琲を淹れる頃、もう其処に雨音で眠りに落ちていく夜がやってきていた。

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