日々の雑感、他愛ないこと。印のように記してみたり。日々の呼吸を此処に。 忍者ブログ

三つ子の魂


 佰圓均一店の水性塗料を試すには丁度いいだろうと、同じ店で買ってきたすのこで作った棚に試してみた。容器に水性ニスと記されていたので、上からニスを塗る必要の無いものだと想うのだけれど、此の間かあさんの家で使ったものとは明らかに異なり、絵の具を塗っているのと変わりない気がした。それでも乾かしてみると台所には合う色だったので安堵した。ウォールナットとメープルとどちらにしようか迷ったものの、メープルに決めてよかった。
 何事にも動じない性格とは程遠く、特に色や質感などを気にしてばかりいる。幼い頃になるべく周りに自分の好きなものを置いて過ごすことを知っていれば、癇癪を起すこともなかったろう。今は苛立ちの対象もだいぶ変わったし、疲れたと想えばすぐ好きなものを見てふれることができるので、さすがに癇癪を起こすことはない。
 嫌なところのある自分とさよならするのは幾つになってもできずにいるけれど、嫌な自分とさよならするのはそう難しいことじゃなかった。今なら気難しくていつも何かを睨むような眼をしていたあのこの頭を撫でて抱いてやれたりもするだろうに、あのこは自分でできるからと断るだろう。三つ子の魂なんとやら・・・。一時はあのこからうんと遠い処へ行ったのにまたあのこへ戻っている。そうして齢さえだんだん消えていき、気付けばあたしはみっつのあのこと同じ位置にいる。
 これから真冬までスリッパは履かず、裸足で家の中を歩き廻っているような気がする。胸に爆弾のようなものとうんと澄んだ川のようなものを抱えて。

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颱風の日に


 激しい雨に窓と云う窓を全て閉じた。風がもう少し強かったなら雨戸も閉じていたかもしれない。川の氾濫の注意を促す知らせが届き、玄関を開けると道路を雨水が川のように流れていた。
 空模様で町の様子も季節もすっかり変わってしまう。晴天の日が決して好きと云うわけではないけれど、カーテンをまぶしく染める朝のやわらかな光を見ていると世界がいとおしく想えてくる。そうしてあたしは自身を日々調律している。でなければ雨の音でするのだけれど、今日は雨が強過ぎる。
 誰も好んで足元をとられたくないし、泣きたくないし、住処を奪われたくない。雨が幾らか治まった頃、外に出てみると、芙蓉の大きな樹木が何事もなかったように雨に濡れていた。彼は何を受け止めてきたのだろう・・・。黙って見上げていると、しだいに調律されていく自分がいた。

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朝顔


 蔓は屋根まで達していた。かあさんの家の朝顔の開きはいつも遅いけれど、彼岸を過ぎても見られなかった。小振りな花だけれど、真っ青な色をしていて、夏に似合うのに。向日葵もハイビスカスも終わってしまったのか、見当たらなかった。代わりに朱い柘榴やまつばぼたんや名前の知らない花が咲きだしていた。
 よく猫が昼寝をしている近くの川の傍の空き地に、大きな朝顔の蔦が幾つもあったので、白いのと桃色のと、種を失敬しかあさんにも分けるつもりだった。其れが今日刈り取られていた。道路際まで草が伸びてしまっていたので誰かきれいにしたのだろうが、朝顔は残して欲しかった。別に歩くのに邪魔ではなかったし、がっかりした。
 参、肆日調子が今ひとつだと想っていると昨夜発熱したが、汗を沢山流し今朝はすっきりとし気持ちよかった。伯父の家から貰った西瓜や葡萄や瓜を腹いっぱい食べ夕刻までにはすっかり元気になっていた。線香の匂いのついたタオルで汗をかいた顔を拭い、父の寫眞に朝顔はまだだねと声を掛けると、黙って父が頷いてくれた気がした。

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花托


 花屋の店先に蓮の花托が置かれているのを見たのは初めてだった。其の侭逆さに吊るしておけば乾燥した花托になるのではと想い、みっつ買ってきた。
 輪ゴムでまとめ麻紐で玄関の靴箱の脇に吊るした蓮の花托は、花托になったばかりの薄緑色をしている。大きな種は今にも飛び出してきそうなものの、一応おとなしくしているようだ。此れが種が落ち茶色になるまでどれくらいかかるのだろう。ひとつだけ家にある花托は、初めからできあがったものを買ってきただけにもっと大きく立派な出で立ちをしている。尤も値もだいぶ違うが。
 過程があり結果があり、結果には優越がつくが過程につかない。本人が納得すればそれでいいことであり、其れを他人が知る必要は無い。だからこそ、他人は其れに対しとやかく言えたりはしない。
 テレビのニュースを見ては、花托の様子を見に行く。壱日と経ってやしないのに、花托の行方を気にしている。人だろうが花托だろうが、ただ悪いことが起こり枯れないで欲しいと願う。他の壱番いい顔や姿に人は嬉しくなるものなんだろう。

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雨降りの日の読書


 壱日雨の降り続く日は久し振りで、被害を気にしながらも、雨の降る音が嬉しかった。雨の音は心を撫で、ぎざぎざになった胸を均していく。朝がそうしてくれるよう、雨もまた人を調律してくれるような気がする。
 読書を習慣にしたいとずっと想っていた。栞をはさみまた次の日途中から読むことに憧れている。雑誌であればできるようになったけれど、小説となると難しく、途中水分をとったり排泄したりこそできるようになったものの最後まで読まないと眠れない。
 此の間みつけた中上健次の奇蹟を読み始めてみると、うまくいった。章毎に一旦区切りをつけられる本は助かる。耳に入る雨の音をなるべく意識しながら読んだ。(意識できる内容の小説だった。)より早く先を勧めたくなる小説だったけれど、栞を挟み閉じた。其れができたので、明日は読まない、と決めた。
 うまい方法をみつけたと想うと、誰かに話したいような気にもなったけれど、やめておいた。今度雨が降るのはいつだろう。其の時同じようにできたら、手紙の隅にでも書いてみようか。子供でなくとも、初めてできたことに浮かれてしまう。

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